ミクロを撮る

秋山 実

(Shooting Microscopic Images)---(2)

私がミクロ写真を発表したのは、1974年である。当時はデザイン関係者などが興味を示すことはあっても、それをデザイン面で使うことを考える人は少なかった。写真雑誌の編集者は、今までの枠から外れた写真の出現に戸惑いを隠さなかった。
いま、これらの写真はカレンダー、ポスター、本の装丁などの印刷物や、パケージ、テレビCM、テキスタイル、インテリア等々に使用されるようになった。

下の写真は、大阪薬業保険センターの壁面に飾られた、7640mm×2755mmの陶板で、カフェイン、ビタミンCなど15種の結晶写真をデザインしたものである。


私がもし研究者であったなら、素材をこれほど自由に扱うことに抵抗を感じたと思う。

私にとって、薬品などの素材は、研究や記録のためでなく、抽象の不思議さをとらえながらそこに自分自身を表現する、そのための素材以外の何ものでもなかった。
私の撮影対象は次第に薬品の結晶から鉱物、金属、LSI、液晶へと広がっていったが、いつも驚かされるのは、凝視しても見えない小さな点の中にも美しい抽象の世界があり、ミクロとマクロの相似性だった。
そして、漆黒の空間から、微細な輝きが成長していく過程をビデオで撮りたくなった。


再結晶の生成(ビデオ撮影)

ニコチン酸アミド

バニリン

スライドグラス上で加熱溶解させ、観察すると、暗黒の一点から、目に見えない核をトリガーにして、結晶化が始まる。
どこから出てくるのか分からないので、神経を使う。

画像の時間表示は、30分の1秒単位なので、結晶生成の早さがわかる。

機材は、日立電子の3CCD顕微鏡ビデオ(120万画素)と、ベータ-カムのレコーダーを使用している。

苦労した点は、ズーミングによる明るさの変動(最新のものは、自動化されている)と、標本の自在な移動法であった。

前者の問題は、無段階のNDフィルターの自作で処理し、後者も、平面上を自在に移動出来る装置を自作した。

音などを含めた編集など、写真とは異質な分野が多く、大分苦労している。


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